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「ねっとの窓口A1市街地グランプリGOTSU2020」の大会レポートを公開しました

この記事は、この2枚の間に何があったかの記録です。

7年の月日を経て遂に開催された日本初の公道レース「A1市街地グランプリGOTSU2020」。日本全国から注目を集めた本大会の当日の様子をA1市街地レースクラブ事務局が写真とともにレポートします。

こんにちは。A1市街地レースクラブ事務局です。

2020年9月20日(日)島根県江津市。この日は朝から心地よい風が吹く秋晴れの空が広がっていました。

ピットとして使用した江津駅前にある山陰合同銀行江津支店

本大会の開催日を当HPで正式に発表したのはちょうど1年前の2019年9月30日でした。それから当日まで天候は最も心配なことの1つでしたが、台風もなく見事な晴天に恵まれました。

いよいよ大会当日の朝を迎え、私たちスタッフの緊張感も高まっていました。

一日で、コースをつくる

「もう一つのミッション・インポッシブル」でも紹介したとおり、今大会最大の難関の一つは、コースの設営と撤去でした。

海外の市街地レースでは、数日から一週間ほどをかけてコースを設営することが一般的です。私たちが江津で選んだのは、当日のうちにすべてを完了させる方式でした。

朝、いつもの道路にコースをつくる。JAFのコース公認査察をパスする。レースを行う。そして完全に撤去し、交通規制を解除して、まちを返す。その一連を、一日のうちに終える。

まちの暮らしを止める時間を、できるかぎり短くする。

市街地レースは、まちの日常をお借りして成り立つものだからです。783メートルのコースの両側に、世界各地のカートコースで用いられている衝撃吸収バリアを設置していきます。設置距離は、合わせて約1.6キロメートル。事前に綿密なシミュレーションと実地訓練を重ねてはいましたが、本番と同じ条件での通し練習はできないまま、当日を迎えることになりました。

当日中に、何事もなく大会を終えることができるのか。最悪の場合、設営が完了せずレースができないという事態も、まったく考えられないわけではありません。私たちスタッフも、不安と緊張に包まれていました。

大会前日、19日18:00から走路の一部許可された場所へバリアを設置することができましたが、これはあくまで歩道への仮設置でした。

19日18:00から行われた前日仮設置の様子

そして大会当日午前7:30。

設営・撤去担当のボランティア約150名、全18チームがパレットごうつ広場に集合しました。ボランティアの中には、前日の仮設営に参加したボランティアと、9月初旬の研修以来、初めて合流するボランティアもいます。

ミーティングではチームごとに入念に最終チェックを行いました。ひとりひとりの目から、与えられた役割への責任と「やるぞ」という気合をひしひしと感じました。

設営・撤去ボランティア

一方で、ピットがある山陰合同銀行江津支店の駐車場では、早朝からカートの整備が進んでいました。

山陰合同銀行江津支店前に並んだ20台のBirelN35

8:45
設営撤去ボランティアが各ポジションにスタンバイ。

9:00
交通規制と同時に設営開始。

設営は、予想を大幅に覆す速さで進みました。

私たちの見込みを大きく上回るタイミングで、全区間のバリア設置が完了したのです。これにはスタッフだけでなく、関係者全員が驚きました。スタッフと地元ボランティアが「今まで誰もやったことがないこと」を成し遂げた瞬間でした。

国道9号線は約440mの長いストレートだ
江津駅前
県道江津港線。国道に向かって勾配のきつい上り坂となっている
最終コーナーは郵便局の前。当日も集荷が行われた
ホームストレート

JAFコース公認査察

さて、コース設営に続きもう1つの難関がありました。それが「JAFカートコース公認」です。

カートコース公認とは、JAFの査察員が安全基準に従いコースを査察し、安全事項に関する勧告指導を行い、公正と安全性が確保されたコースであるとJAFが公認することです。JAF公認カート競技に使用されるコースは、JAFの公認が必要とされています。

本大会が画期的だった点は、街の中心地を使った公道レースであったことはもちろんですが、JAFの公認を受けたコースで、公認カート競技会を開催したことです。

わざわざなぜこんな大変なことをしたのか?とよく聞かれますが、その理由は、安全性の確保は当然のこと、「日本で初めてとなる公道レースは、公式なJAF公認競技会として開催するべきだ」という主催者の考え方があったからです。

なぜなら、日本のモータースポーツを統括するJAFに公認された正式な競技会ということは、この市街地レースが単なる草レースではなく、誰が見ても安全と信頼が確保されているということ。それが今後の日本のおける市街地レースの発展へと続く土台になると確信しているからです。

査察は2回あり、1回目の事前査察後に査察報告書で勧告指導が出されます。主催者は査察報告書の必要条件を満たすまでコースを改善し、2回目の直前査察をクリアするとコース公認を受けることができます。

江津市街地サーキットの場合、コースが完成するのはレースの1時間前ですので、それまでコースは存在しません。1回目の事前査察は、今年の8月中旬に道路上で行われました。道路の形状やコーナーの角度、傾斜などから、頭の中でコースをイメージしながらの査察でした。

そして迎えた当日。
直前査察はコース設営と同時進行で行われました。設置が完了したエリアからJAF査察員と主催者が一緒にコースを歩き、規定に従ってポイントをチェック。指導勧告があった箇所はその場で修正対応しました。

6コーナーは路面状況が悪いため、最後まで走行ラインのチェックが行われた
黄色いチョークでグリッドラインを引くスタッフ
音量測定器を設置するスタッフ

10:40頃
予想以上に設営が早く終わったため、当初は予定していなかった1台のカート走行によるコース検証を行うことになりました。カートが初めて公道を走行した瞬間です。

カートが公道を走行した瞬間
カートを使用したコース査察は続く

11:30
全ての必要条件を満たし、JAF査察員から主催者へ遂にコース公認が手渡されました。これでようやくレースを行うための全ての準備が整いました。フリー走行開始30分前のことでした。

鎌田審査委員長からJAFカートコースライセンスが手渡された

その間、設営やコース査察の間、競技、警備、ホスピタリティなど、他のボランティアグループも着々と準備を進めていました。

競技スタッフ事前ミーティング。専門スタッフと共に江津のボランティアもマーシャルとして参加した
山口県のカートコース「ナチュラサーキット」を運営する松村氏。2013年企画構想開始時から携わり、本大会では競技長として競技スタッフを統括した
ホスピタリティボランティアのミーティング

エントリーリスト

11:40
会場への入場ゲートもクローズしたところで、まずは11人のドライバーによる2周の慣熟走行がスタートしました。いわゆる慣らし走行です。ドライバーはコースの路面状況を確かめながら、カート、計測器などに不具合がないかをチェックします。当初は12台の出走を予定していましたが、エントリーリストは最終的に11台になりました。

エントリーリスト

車両No ドライバー名
1 関口 雄飛
2 大井 偉史
3 篠田 義仁
4 曽根 崇仁
5 松村 浩之
6 内田 優
7 小澤 浩二
8 永瀬 貴史
10 宮川 栄幸※
11 KAMI※
12 高崎 保浩


※9号車は欠番
※10、11号車は賞典外

出走前のドライバー

フリー走行

12:00 7分間のフリー走行開始。いよいよレースプログラムのスタートです。ここからはコース沿道の歩道の通行も禁止となりました。

ピットアウトしたドライバー

チェッカー後は、時間短縮のためピットインせず、ホームストレートのグリッドに戻ります。これは前日のブリーフィングで決定しました。

予選タイムアタック

12:15
予選タイムアタックスタート。1周後、スタートラインで日章旗が振り下ろされたらタイム計測開始です。予選タイムアタックの様子は動画でご覧ください。

10分間の予選が終了。予選タイムの結果でスターティンググリッドが決定しました。

予選結果

決勝レース

12:45
遂に歴史的な瞬間がやってきました。江津実行委員会の今井委員長の開催宣言とともに、日本初の公道を使った市街地グランプリの決勝レースがスタートしました。

決勝レーススタート

決勝レースは20周。スタート直後からいきなりハイレベルなバトルが繰り広げられました。普段生活で使用している道路を、平均時速約60kmのカートが疾風のごとく駆け抜けていきます。安全性が高く重量も120kgあるレンタルカートとはいえ、本格的な四輪自動車レースに負けない迫力でした。日頃からカート競技には馴染みのある私たちスタッフもこれには驚きました。周囲で観戦していた地元住民の方々は手を振って応援し、大きな歓声が上がっていました。

レース中には、複数台が絡む接触もありました。しかし負傷者は出ていません。設置したバリアが、車両の衝撃を設計どおりに吸収したためです。

安全基準に適合したコースを、時間内に、確実につくる。その意味が最もはっきり表れた場面でした。

A1市街地グランプリGOTSU2020決勝レースノーカット版
島根県ケーブルテレビ協議会YouTubeライブ中継

※開催終了後1ヶ月間視聴可能

市街地レースを制した2号車の大井選手
ゴール後、観客に向かって手をふる選手
オフィシャルアンバサダー関口雄飛選手のレース後のコメント

「日本初の公道レースを開催するということで、自分の経験を活かして安全にレースができるように精一杯協力させていただきました。

今日はやはりレースなので、多少の接触はありましたが、事故なく、誰も怪我をすることなく終えることができました。

青白のバリア(GoTrack)がすごい働きをしていて、レース車両のダメージを最大限吸収してくれたのですが、それを設営してくれた約150名の地域のボランティアの方々のおかげで安全にレースができました。これがもしタイヤバリアやガードレールだったらもしかしたら事故になっていたかもしれませんが、皆さんの協力のもと、今日無事1日レースを終えられたことに非常に感謝しています。ありがとうございました。

そして市街地レースは始まったばかりです。

コロナで何とも言えないですが、今後もっと車が速くなったり、出場する選手が増えたり、コースも広くなったりと、来年以降は更に大会が大きくなることを願っています。それが江津市の一大イベントとなってさらに成長することを願って、自分もできることを精一杯協力したいと思います。

今年に限らず来年以降もぜひ応援よろしくお願いします。ありがとうございました。」

決勝レース後にコメントするオフィシャルアンバサダーの関口雄飛選手

撤去も圧巻

レースから表彰式までは、予定どおりに終了しました。

「日本初の市街地レースが、何事もなく無事終わった」と一息つくのも束の間、バリアを完全に撤収し、原状復帰をして交通規制を解除するまでが、私たちの仕事です。まだ気は抜けません。

しかし、その心配も杞憂に終わりました。

撤去も設営と同じく速く、予定を前倒しして交通規制を解除することができました。ボランティアの皆さんの働きは、本当に素晴らしいものでした。そして、道路は元の姿に戻りました。

撤去もあっという間に終わった。

まちは、元に戻った

次のステージへ

市道、県道、国道を6時間全面通行止めして行った公道スプリントレースは、日本では前例のない出来事でした。

今回の江津大会で、私たちが目指すグランプリシリーズ構想の「1年目―Breakthrough(現状打破)―」を成し遂げることできましたので、今後も当初の構想どおり、単なるレースに留まることなく、公道を使用した実証実験やテスト走行、新技術開発など産学の発展と技術革新に寄与するイベントの可能性を探っていきます。

実は今大会でもその片鱗がありました。

Formula EモナコGPでも公式清掃車として多く採用されているイタリアDULOVO社の日本総代理店マーテック社が、本大会のテクニカルサポーターとして参加。レースが開始前と終了後に道路清掃を実施していただきました。

大会当日朝7時から出動したDULEVOのEVロードスイーパー

マーテック社が運転したのは、日本初の電動式ロードスイーパー「D.zero2」をはじめとする小型車3台でした。このEVロードスイーパー、日本ではまだ未導入です。実はレース中も事故などの緊急時に出動できるよう、ピットで待機していました。

今大会中、商談の引き合いがあったそうです。新技術の発表や実験をする「まちの展示場」を目指す私たち主催者としては狙い通りでうれしい出来事でした。公道イベントは、多くの方々が新商品や技術を目にしたり、体験できるイベントなのです。

県道と国道9号線の堺。イン側は非常に路面状況が悪く砂や石がたまっていたが、道路清掃車のおかげで安全にレースができた

最後に

最後になりましたが、本大会が予定通り無事開催できただけでなく、奇跡的とも言えるほど円滑に物事が進み、大成功に終えることができたのは、多くの方々のご支援、ご協力あってのことでした。主催者一同この場を借りて心よりお礼申し上げます。

私たちは、このGOTSU2020に関わったスタッフ、ボランティア、ドライバー、観客、関係者の全員で、この消滅可能性都市と言われる江津市でこれまで見たことのない素晴らしい景色を創造し、日本初という感動の瞬間を共有できたことを誇りに思います。

本大会の開催には、多くの方からたくさんの支援をいただきました。取り組み開始から丸7年の間に、行政、道路管理者、警察、モータースポーツ関係者、地域住民の方や事業者様など、本当に多くの方の協力と支援なしではここまで到達できませんでした。

そして、8月に募集を開始したクラウドファンディングでも、全国から本当にたくさんの支援と温かい応援のメッセージをいただきました。皆さんお一人ひとりの気持ちがどれだけ私たちの励みになったか、感謝の気持ちを伝えても伝えきれません。本当にありがとうございました。

この日本初のチャレンジを通して、未来に向かって挑戦する姿が少しでも多くの方に元気と勇気を与え、地方の在り方や新しい社会・時代の可能性を感じていただけたら主催者一同とてもうれしく思います。そしてAnyone(誰でも)の名前のとおり、今後も誰もが参加できる市街地イベントを目指し次の目標へ向けて引き続き邁進してまいります。

集合写真
関連リンク
・大会公式プログラム(準備中)
・ A1市街地レースクラブ公式YouTubeチャンネル
・ ボランティアスタッフ
・ 掲載メディア一覧

そして、2026年12月13日

2026年12月13日(日)、江津のまちで、2回目の市街地レース「A1市街地グランプリ GOTSU2026」を開催します。

舞台は、江津市の市街地特設コース。日本初を成し遂げた江津のカートレースが、いま、第2章に向かって準備を進めています。

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・市街地レースの開催をご検討の自治体の皆さまへ

本記事は2020年10月に公開した記事を、2026年に一部加筆・再編集したものです。

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